湯浅佳子著 『近世小説の研究――啓蒙的文芸の展開――』 刊行

2017.02.23 Thursday

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    ●湯浅佳子氏の大著『近世小説の研究――啓蒙的文芸の展開――』が発行された。先日の、『仮名草子集成』第57巻に続いて、仮名草子研究に関する著書の刊行で、大変嬉しい。
    ●650余頁という、湯浅氏の大著を目の前にして、この研究の源泉に思いを寄せた。湯浅氏は、この著書の「あとがき」の中で、次のように述べておられる。
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     東京学芸大学在学中には、故小池正胤先生の近世文学ゼミに加わり。先生のご指導のもとで丼原西鶴の浮世草子について卒業論文を書いた。思えばそれが筆者の研究の出発点であった。学部卒業後もなお小池先生主催の叢の会にお
    うかがいする機会をいただいた。
    ……中略……                                      
     二松学舎大学大学院では、青山忠一先生のご指導の下で仮名草子研究に取り組んだ。青山先生の御授業では名調子の雑談が面白く、それをお聴きしているだけで瞬く間に時が過ぎていったものであるが、しかしそうしたとりとめもな
    いお話の中に、仮名草子や西鶴浮世草子をどう読むかという文学研究の本質的な問題や、研究者としてあるべき心構えといった、院生にとって大切なメッセージが込められていたのであった。この青山先生の、仏教学から読む近世前期草子論が、やがて筆者の研究の拠り所となった。……
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    ●湯浅氏が、小池正胤先生と青山忠一先生の御指導を受けられたことを、今、私は知った。この大著の目次を一覧して、全て了解できたように思う。
    ●東京学芸大学の、小池正胤先生を中心とする【叢の会】の地道な活躍、大きな研究業績には、多くの学恩を賜り、感謝していた。また、青山忠一先生には、野田寿雄先生が主宰された、第一次仮名草子研究会で、たくさんの御指導を賜った。特に仏教思想と仮名草子との関係では、腹蔵なく、貴重なお教えを賜った。
    ●湯浅氏は、この偉大な先学の御指導を頂いて、卒論を書き、その後の研究会でも研鑽を積まれ、大学院では、青山先生の下で、仮名草子を研究された由である。湯浅氏の論文は、これまでも、ある程度は読んでいて、多くの事を教えられてきた。今回、この労作・大著によって、さらに受ける学恩は大きい。大著の刊行を祝し、感謝申上げる。

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    『近世小説の研究――啓蒙的文芸の展開――』
     湯浅 佳子 著
       
           汲古書院、平成29年2月20日発行
           A5判・656頁・17000円+税

    目 次 

    几  例 ………………………………………………………………   

    序  論 ………………………………………………………………   3


    第一部 仮名草子とその周辺


     第一章 仮名草子と古典 …………………………………………  21 
      
      第一節 近世艶書文芸における『詞花懸露集』 ……………  22
          【資料編】 『詞花懸露集』文例甲・乙の翻刻
                 および文例の注釈 …………………  65
      第二節 『薄雲恋物語』考 ……………………………………  86
      第三節 仮名草子『錦木』の性格 ……………………………  98
          【資料編】 仮名草子『錦木』の和歌と出典一覧… 116 
      第四節 『安倍晴明物語』と中世の伝承 …………………… 138

    第二章 仮名草子と思想 ………………………………………… 153

      第一節 『他我身のうへ』の三教一致思想 ………………… 154
      第二節 清水春流と護法書 …………………………………… 169
      第三節 『うしかひ草』と「十牛図」「牧牛図」……………… 184
    第四節 『伽婢子』の仏教説話的世界
         ――教養としての儒仏思想の浸透―― ………… 203
    第五節 『先代旧事本紀大成経』における歴史叙述
         ――聖徳太子関連記事を中心に―― …………… 226

    第三章 仮名草子と怪異説話 …………………………………… 245

      第一節 『曽呂里物語』二話――その怪異性について …… 246
      第二節 『曽呂里物語』の類話 ……………………………… 250
      第三節 怪異説話の展開――『曽呂里物語』と『宿直草』  270
    第四節 『宿直草』の創意――巻四――十六
        「智ありても畜生はあさましき事」―― ………… 285

    第四章 近世軍書の研究 ………………………………………… 293

    第一節 『鎌倉管領九代記』における歴史叙述の方法 …… 294
    第二節 『鎌倉北条九代記』における歴史叙述の方法 …… 317
    第三節 『鎌倉北条九代記』の背景
        ――『吾妻鏡』『本朝将軍記』等先行作品との関わり――
          ……………………………………………………… 339
    第四節 『北条記』諸本考 …………………………………… 349
    第五節 『北粂盛衰記』の板木修訂
        ――七巻本から八巻本へ―― ……………………… 366


    第二部 説話考証随筆・談義本・読本の研究


    第一章 『広益俗説弁』の研究 ………………………………… 397
     
      第一節 『広益俗説弁』の性格 ……………………………… 398
    第二節 『広益俗説弁』と周辺書
       ――俗説の典拠類話と俗説批評の背景―― ………… 421
    第三節 金王丸と土佐坊昌俊
       ――『広益俗説弁』巻十二より―― ………………… 457
         
    第二章 談義本・読本と思想 …………………………………… 465

    第一節 増穂残口の神像説
       ――『先代旧事本紀大成経』との関わりを中心に―― 466
    第二節 大江文坡の談義の方法
       ――『成仙玉一口玄談』を中心に―― ……………… 482
      第三節 『南総里見八犬伝』と聖徳太子伝 ………………… 502
    第三節 聖徳太子と瓢箪――『先代旧事本紀大成経』
         から『聖徳太子伝図会』ヘ―― ………………… 521
    第四節 読本『小野篁八十嶋かげ』における篁説話の展開  527

    第三章 馬琴読本の世界 ………………………………………… 537

     第一節 『盆石皿山記』小考 ………………………………… 538
      第二節 『新累解脱物語』考――珠鶏の善を中心に―― … 555
      第三節 趣向と世界――演劇・草双紙から読本への影響 … 568
      第四節 『三七全伝南柯夢』の楠譚 ………………………… 582
      第五節 『松浦佐用媛石魂録』における忠義と愛情 ……… 596
    第六節 『南総里見八犬伝』の犬と猫
       ――『竹箆太郎』と口承伝承とのかかわり―― …… 615
    第七節 『近世説美少年録』と阿蘇山伝説 ………………… 627

    初出一覧 ……………………………………………………………… 633
    あとがき ……………………………………………………………… 639
    索  引 ………………………………………………………………   


    著者略歴

    湯浅佳子 (ゆあさ よしこ)(戸籍名 菊池佳子)

    1965年、宮崎県生まれ。
    二松学舎大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程単位取
    得退学。博士(文学)。日本近世文学専攻。現在、東京学芸大
    学教育学教育学部教授。
    共編著:に、『仮名草子集成』第55・56巻(東京堂出版、2016年)、
    『秀吉の虚像と実像』(笠間書院、2016年)、『天空の文学史 太
    陽・月・星』(三弥井書店、2014年)、『浅井了意全集 仮名草
    子編4』(岩田書院、2013年)、『浸透する教養 江戸の出版文
    化という回路』(勉誠出版、2013年)ほか。


    ■湯浅佳子著 『近世小説の研究――啓蒙的文芸の展開――』