一般教養の 〔文学〕

2016.02.29 Monday

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    ●小原亨氏の近著を拝読して、心打たれるものがあった。
    西鶴にしろ、芭蕉にしろ、近松しろ、元禄文学の三大文豪は、
    人間のとらえ方が水準を超えていた。
    ●私は、昭和女子大学に勤務した初めの頃、一般教養の文学を
    担当した。私の立てた授業計画は、この時間を通して、〔文学〕
    の威力の大きさを学生に伝えたい、ということを基本に据えた。
    ●文学とは何か、文学の条件、文学の価値、そんなことを確認して、
    各論に入った。テキストは使わず、最小限のプリントを配付した。
    各論では、具体的な優れた作品を紹介して、読者は、何故、感動
    するか、そんなことを解りやすく講義した。
    ●採り上げた作品は、『源氏物語』『蜻蛉日記』『奥の細道』
    『曽根崎心中』『心中天の網島』『雨月物語』『破戒』『舞姫』
    『暗夜行路』『蝕まれた友情』『風立ちぬ』『罪と罰』
    『カラマーゾフの兄弟』『ヴェートーベンの生涯』『ジャン・
    クリストフ』『赤と黒』・・・。採り上げた作品は、まだまだ
    あったと思うが、これらを、その時間のテーマに沿って、1時間に
    1作品を紹介して、文学の価値を理解してもらった。
    ●採り上げるかどうか、一番迷ったのは、島崎藤村の『破戒』だった。

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    明治後期、信州小諸城下の被差別部落に生まれた主人公・瀬川丑松は、
    その生い立ちと身分を隠して生きよ、と父より戒めを受けて育った。
    その戒めを頑なに守り成人し、小学校教員となった丑松であったが、
    同じく被差別部落に生まれた解放運動家、猪子蓮太郎を慕うようになる。
    丑松は、猪子にならば自らの出生を打ち明けたいと思い、口まで出掛かかる
    こともあるが、その思いは揺れ、日々は過ぎる。やがて学校で丑松が被差別
    部落出身であるとの噂が流れ、更に猪子が壮絶な死を遂げる。
    その衝撃の激しさによってか、同僚などの猜疑によってか、丑松は追い詰められ、
    遂に父の戒めを破りその素性を打ち明けてしまう。そして丑松はアメリカの
    テキサスへと旅立ってゆく。  【あらすじ ウィキペディア より】
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    ●部落問題など、複雑な点があり、大勢の学生に講義することは、
    躊躇されたが、近代文学の中で、この作品は避けて通れない力作だと評価して
    いたので、講義に入る前に、この点を十分に説明して、90分、一気に
    喋りきった。準備も大変だったけれど、一般教養の時間としては、今も、
    記憶に残る講義であった。