老境

  • 2020.01.14 Tuesday
  • 06:25
老 境

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大方人のなすまにまにまかせつゝ、明ればともしからず物くひ、暮れば酒のみて熟寐す。かゝればなすわざもなくて、鳥虫のつらにて世をなむ尽すべき。
然れども折にふれ時に付、いさゝかの心やりは、おのづからなむある。
まづ、春は鶯の声をきゝ、庭艸のもゆるを見、夏は涼しき方により、心のまゝにおきふしつゝ、夕月の光りをまちいで、秋は草むらの虫をきゝ、白露に打なびく尾花をめで、冬は厚肥たる衣ども打かさね、火により居て雪を見る。
昔折にふれ、気色あるわたりへゆき、はた人にも交りなどしつるに、さては興ある事もいさゝかはうちまじれど、はた心づかひせられて、中々に味気なきこと共も多かりしかば、今はをさをさいづくへもゆかず。
いつともわかぬ友とては、はかなき文どもを明暮の慰めにて、あるものともなくて世を経れば、いとなむ心やすき。

  世のなかは苦しきものをかぎろひのあるにもあらであるが楽しさ

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●これは、『井関隆子日記』、天保13年2月20日の条。隆子は、この時、58歳である。私は、今、84歳である。酒こそ、隆子のように飲めないが、心境は同様である。

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  • 2020.07.07 Tuesday
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