仮名草子 かなぞうし

  • 2019.10.18 Friday
  • 07:07
仮名草子 かなぞうし

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仮名草子(かなぞうし)とは、江戸時代初期に仮名、もしくは仮名交じり文で書かれた、近世文学における物語・散文作品を総称したもの。 井原西鶴の『好色一代男』が出版された天和2年(1682)頃を区切りとするのが一般的である[1]。

目次

• 1概略
• 2内容
• 3主な作品
• 4脚注
• 5参考文献

概略

御伽草子の延長に生まれ、仮名を用いた庶民向けの読み物として出版され、雑多な分野を含む。1ジャンルとしては異様に幅広い範囲を扱うため、中世文学と近世文学の過渡期の散文を一括りにした呼称と言える。
中世文学と仮名草子の違いのひとつに出版がある[2]。中世文学の複製方法が写本であったのに比べ、近世には仮名草子のような俗文芸も木版で大量に刷り販売されるようになった。手慰みに書かれた中世文学とは違い、仮名草子は製本され世間に流布されることが前提にある。平和の訪れとともに識字階層も増え、新たな読者層の要求に応える職業作家も現れるようになった。
作者の多くは当時の知識人層であり、浅井了意、鈴木正三(しょうさん)、烏丸光広らが知られている。 また、斎藤親盛や江島為信など、教養のある浪人が一時の糊口をしのぐために書いた作品が多い[3]。
明暦年間(1655-)から寛文年間(1661-1672)にかけてが仮名草子の最盛期と言われる[4]。延宝年間(1673-)ごろより西山宗因を盟主とする談林俳諧が隆盛し文壇の主流は関西へと移った。説話からハナシへと文学の流行が移行していくにつれ、教説性の強い仮名草子は下火となった[5]。やがて、宗因門下の井原西鶴による『好色一代男』などの優れた文芸が著されるようになり、これは後に浮世草子と区別して呼ばれるようになる。

内容

初期の仮名草子は戦国時代の回顧や大名の一代記などが多かった。通じて啓蒙的な内容のもの、儒教的な教訓を含んだ物語や説話集に人気があった。笑話のほか、名所案内記、また野郎評判記、遊女評判記のように実用的なガイドブックとして読まれたもの、事件や災害などを叙述する見聞記など多岐にわたる。
寛文10年に刊行された『増補書籍目録』では、当時の書籍が36項目に分類されている。

主な作品

• 仁勢物語(作者不詳)
• 竹斎(富山道冶)
• 恨之介(作者不詳)
• 清水物語(朝山意林庵)
• 可笑記(如儡子、斎藤親盛)
• 浮世物語(浅井了意)
• 東海道名所記(浅井了意)
• あづま物語(作者不詳・遊女評判記)
• 難波鉦(酉水庵無底居士・遊女評判記)
ほか多数。深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究文献目録』によれば、300点におよぶ。

脚注

1. ^ 谷脇 1999, p. 627.
2. ^ 谷脇 1999, p. 628-630.
3. ^ 江本 2000, pp. 30-31.
4. ^ 江本 2000, p. 22.
5. ^ 江本 2000, pp. 32-38.

参考文献

• 仮名草子の叢書として約200編を収める「仮名草子集成」(全70巻の予定、東京堂出版)がある(2019年3月現在、61巻まで刊行。参考:[1])。
• 谷脇理史『仮名草子集』小学館、1999年。
• 江本裕 『近世前期小説の研究』若草書房、2000年。
• 坪内逍遥・水谷不倒『近世列伝体小説史』春陽堂、明治30年。
• 水谷弓彦『仮名草子』水谷文庫、大正8年
• 水谷不倒『新撰列伝体小説史 前編』、春陽堂、昭和7年。
• 北条秀雄『改訂増補 浅井了意』笠間書院、昭和47年。
• 田中伸『仮名草子の研究』桜楓社、昭和49年。
• 水田潤『仮名草子の世界―未分化の系譜―』桜楓社、昭和56年。
• 野間光辰『近世作家伝攷』中央公論社、昭和60年。
• 渡辺守邦『仮名草子の基底』勉誠社、昭和61年。
• 野田寿雄『日本近世小説史 仮名草子篇』勉誠社、昭和61年。
• 三浦邦夫『仮名草子についての研究』おうふう、平成8年。
• 松原秀江『薄雪物語と御伽草子・仮名草子』和泉書院、平成9年。
• 市古夏生『近世初期文学と出版文化』若草書房、平成10年。
• 青山忠一『近世仏教文学の研究』おうふう、平成11年。
• 花田富二夫『仮名草子研究―説話とその周辺―』新典社、平成15年。
• 近世文学書誌研究会編『近世文学資料類従・仮名草子編・古板地誌編』 全61冊、勉誠社、昭和47〜56年。
• 東洋文庫・日本古典文学会編『仮名草子』貴重本刊行会、昭和49年。
• 谷脇理史編『仮名草子集』早稲田大学資料影印叢書刊行委員会・早稲田大学出版部、平成6年。
• 朝倉治彦等編・校訂 『仮名草子集成』 1巻〜49巻、東京堂出版、昭和55〜平成25年。全70巻で、刊行中。
• 野田寿雄校注『仮名草子集』上・下、日本古典全書、朝日新聞社、昭和35・37年。
• 前田金五郎・森田武校注『仮名草子集』日本古典文学大系90、岩波書店、昭和40年。
• 青山忠一・岸得蔵・神保五弥・谷脇理史校注・訳『仮名草子集 浮世草子集』日本古典文学全集37、小学館、昭和46年。
• 渡辺守邦・渡辺憲司校注『仮名草子集』新日本古典文学大系74、岩波書店、平成3年。
• 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究文献目録』和泉書院、平成16年。
• 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究叢書』全8巻クレス出版、平成18年。
• 田中宏『仮名草子の文学的研究』人間の科学社、2016年。
• 深沢秋男「仮名草子研究の歴史」(「近世初期文芸」33号、2016年12月)
• 深沢秋男「仮名草子の書誌的研究」(「近世初期文芸」35号、2018年12月)

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仮名草子  かなぞうし  【はてなキーワード】

読書

目次

• 仮名草子とは

仮名草子 (かなぞうし)

【定義】

近世初期、慶長(1596〜1615)から天和(1681〜84)にかけての、約80年間に作られた、小説を中心とする散文文芸の総称。ただし、このように、散文文芸全般を含める広い範囲とする説と、他方で、物語・小説的な作品に限定すべきであるとする説もある。
この近世初期は、日本歴史の中でも代表的な啓蒙期であり、この時期に、漢字(振仮名付き)交じり仮名書きの通俗平易な読み物が次々と作られた。これら一群の文学的著作に与えられたのが「仮名草子」という名称で、命名は仮名草子研究を切り拓いた水谷不倒である。その数は、はじめは180点ほどであったが、研究が進むにつれて増加して、現在では300点にも達する。
作品の原本は、写本または版本(古活字本・整版本)として伝存するが、版本は出版の黎明期にふさわしく、全体に版式もおおらかで、大きな本が多い。

【分類】

仮名草子は、物語・詩歌・日記・随筆・評論・実録などのように、さまざまな文学ジャンルを包括している。そこで、これらを、どのように分類整理するかという問題が生じる。
野田寿雄氏の説に従って紹介すると以下の通りである。
1、 啓蒙教訓的なもの(教義問答的なもの、随筆的なもの、女性教訓的なもの、翻訳物)
2、 娯楽的なもの(中世風な物語、説話集的なもの、翻訳物、擬物語)
3、 実用本位のもの(見聞記的なもの、名所記的なもの、評判記的なもの)
この分類からもわかる通り、仮名草子は複合ジャンルのような性質をもっている。文学史的には、お伽草子→仮名草子→浮世草子と接続するが、これを小説の系列として考えるならば、小説以外の作品をどう扱うべきか、という問題が今後の課題として残されている。

【範囲】

 仮名草子の範囲を考える場合、留意すべき事項は、次の各項目が考えられる。
 1、御伽草子との関連。
 2、浮世草子との関連。
 3、評判記(遊女・役者)との関連。
 4、軍書、軍学書との関連。
 5、咄本との関連。
 6、随筆的著作との関連。
 7、名所記、地誌、紀行との関連。
 8、教訓書、女性教訓書との関連。
 9、仮名仏書、仮名儒書との関連。
 10、注釈書(・・・抄)との関連。
 11、翻訳物、翻案物との関連。
 これらの、各項を具体的に検討することも今後の課題である。

【参考文献】

◎坪内逍遥・水谷不倒『近世列伝体小説史』春陽堂、明治30年。
◎水谷弓彦『仮名草子』水谷文庫、大正8年。
◎ 水谷不倒『新撰列伝体小説史 前編』、春陽堂、昭和7年。
◎ 北条秀雄『改訂増補 浅井了意』笠間書院、昭和47年。
◎ 田中伸『仮名草子の研究』桜楓社、昭和49年。
◎ 水田潤『仮名草子の世界―未分化の系譜―』桜楓社、昭和56年。
◎ 野間光辰『近世作家伝攷』中央公論社、昭和60年。
◎ 渡辺守邦『仮名草子の基底』勉誠社、昭和61年。
◎ 野田寿雄『日本近世小説史 仮名草子篇』勉誠社、昭和61年。
◎ 三浦邦夫『仮名草子についての研究』おうふう、平成8年。
◎ 松原秀江『薄雪物語と御伽草子・仮名草子』和泉書院、平成9年。
◎ 市古夏生『近世初期文学と出版文化』若草書房、平成10年。
◎ 青山忠一『近世仏教文学の研究』おうふう、平成11年。
◎ 江本裕『近世前期小説の研究』若草書房、平成12年。
◎ 花田富二夫『仮名草子研究―説話とその周辺―』新典社、平成15年。
◎ 近世文学書誌研究会編『近世文学資料類従・仮名草子編・古板地誌編』 全61冊、勉誠社、昭和47〜56年。
◎ 東洋文庫・日本古典文学会編『仮名草子』貴重本刊行会、昭和49年。
◎ 谷脇理史編『仮名草子集』早稲田大学資料影印叢書刊行委員会・早稲田大学出版部、平成6年。
◎ 朝倉治彦等編・校訂 『仮名草子集成』 1巻〜49巻、東京堂出版、昭和55〜平成25年。全70巻で、刊行中。
◎野田寿雄校注『仮名草子集』上・下、日本古典全書、朝日新聞社、昭和35・37年。
◎ 前田金五郎・森田武校注『仮名草子集』日本古典文学大系90、岩波書店、昭和40年。
◎ 青山忠一・岸得蔵・神保五弥・谷脇理史校注・訳『仮名草子集 浮世草子集』日本古典文学全集37、小学館、昭和46年。
◎ 渡辺守邦・渡辺憲司校注『仮名草子集』新日本古典文学大系74、岩波書店、平成3年。
◎ 谷脇理史・岡雅彦・井上和人校注・訳『仮名草子集』新編日本古典文学全集64、小学館、平成11年。
◎ 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究文献目録』和泉書院、平成16年。
◎ 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究叢書』全8巻クレス出版、平成18年。

■仮名草子研究文献目録 → http://www.ksskbg.com/kana/index.html

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  • 2019.11.14 Thursday
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