大輪靖宏 第5句集 『句集 月の道』 刊行

  • 2019.10.12 Saturday
  • 10:15
大輪靖宏『句集 月の道』 刊行

大輪靖宏著 『句集 月の道』
2019年10月19日 本阿弥書店発行
平成・令和の100人叢書69
46判、212頁、定価2800円+税

句集 月の道*目次

第一部
 これからの生命     二〇一六年 ・・・・・・・・・・   7
 うんともすんとも    二〇一七年 ・・・・・・・・・・  35
 春の旅         二〇一八年 ・・・・・・・・・・  59

第二部
 月の道        二〇一七年 ・・・・・・・・・・  87
 美しき刻       二〇一八年 ・・・・・・・・・・ 119
 夏に生きる      二〇一九年 ・・・・・・・・・・ 179

あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 209

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あとがき

 この句集は、私の第五句集である。第四句集『海に立つ虹』までは、特に強く意図したわけではなかったが、結果的には六十五歳から五年ごとの刊行であった。こうなると、次の句集は八十五歳になったらと内心期するものがあったのだが、今回は八十三歳での刊行と少し繰り上がった。
 それは俳句総合誌「俳壇」から、年に四回、三十三句ずつを二年間掲載するという企画を提示されたからである。これで一挙に私の句の生産量が上がった。「俳壇」以外に発表した句もあるので、前句集から三年にしてなんとか次の句集が出来そうになったのである。
 ここでぐっと我慢して、さらに句作に精進し、自句について厳選に厳選を重ねてあと二年を過ごせば、より良い句集になるのだろうが、私にはどうもそういう気持が薄いのだ。そこで、第四句集以降の句を第一部とし、「俳壇」に掲載されたものを第二部として一書を構成することとした。
 もともと私は国文学の教師であり、俳句も六十歳までは研究対象であった。自分で作ってみた方が俳句に対する理解も深まるだろうと作り始めた俳句であるから、今の俳壇をリードしている専門俳人とは少し俳句に対する姿勢が異なる。自分の考える俳句というものが出来れば満足なのだ。
 こんな姿勢を押し通せるのも、私か俳句結社に所属したことがなく、俳句の上での師匠を持ったこともないからだろう。国文学研究として芭蕉や蕪村など江戸俳諧史には接し、そこから多くのことを学んだが、結局のところ俳句についてはまったく自分本位であって、自分の好みに合った句を良しとし、たとえ良い評価を受けた句であっても好みに合わなければ捨てるということをしてきた。つまり、この句集は自分の好みに合う句が一応一冊分になったということである。
 こういう勝手な行動を取ってきた私でも、共に句を作り合う仲間には恵まれている。鎌倉女子大学公開講座の受講者が中心になって出来た「輪の句会」、私の教えた学生およびその知人達による「上智句会」、上智大学出身者の団体の一つである「ソフィア俳句会」などの人々が一緒に俳句を楽しんでくれている。
 また、既成結社に所属したことのない身だが、日本伝統俳句協会に入れて頂いているので、そこでの俳句大会などにも参加することが多い。師も所属結社もなしに勝手に俳句を作って楽しもうとしているにしては恵まれた環境と言える。
 この句集もそうした恵まれた環境に甘えてのものである。自己満足と言われても仕方がないが、ともかく満足しての句集である。
 この句集の作成については本阿弥書店の「俳壇」編集長の安田まどかさんにたいへんお世話になった。格好良い句集が出来上がったことに感謝している。内容もそれに伴えば良いのだが。
令和元年十月吉日                            大輪 靖宏

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○自選十句

水澄めば野に新たなる風生まる
遠野なら河童も亀も鳴くだらう
結論を下して後の寒さかな
ぶらんこを降りてこの世の身の重さ
目的を持たぬ楽しさ花野行く
月昇り海に光の道生まる
凍鶴の孤影の伸びて日の沈む
山を出て春の水とて流れけり
春めくを挨拶に言ふエレベーター
来世など信じぬ者の夜の秋

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著者略歴

大輪靖宏(おおわ・やすひろ)
1936年東京生まれ
慶應義塾大学文学部卒業・同大学院修了
上智大学名誉教授・文学博士

日本伝統俳句協会副会長
国際俳句交流協会副会長
「輪」主宰
上智句会代表

著書『上田秋成文学の研究』(笠間書院)
  『上田秋成 その生き方と文学』(春秋社)
  『芭蕉俳句の試み』(南窓社)
  『花鳥諷詠の論』(南窓社)
  『俳句に生かす至言』(富士見書房)
  『俳句の基本とその応用』(角川学芸出版)
  『なぜ芭蕉は至高の俳人なのか』(祥伝社)
  『芭蕉の創作法と「おくのほそ道」』(本阿弥書店) 他
句集『書斎の四次元ポケット』(ふらんす堂)
  『夏の楽しみ』(角川書店)
  『大輪靖宏句集』(日本伝統俳句協会)横浜俳話会大賞 平成28年度横浜文学賞受賞
  『海に立つ虹』(文學の森)與謝蕉村賞、文學の森準大賞

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●大輪靖宏氏の第五句集が刊行された。私は、第一句集から頂いて、拝読してきたが、ますます、俳句の境地は鋭く深く、自然、人事の奥底に迫っているように思われる。私は、句も詩も創れない。ただ、鑑賞するのみであるが、その、詩人や俳人の境地は拝察できると思っている。自選十句を一句一句みても、自らの観察や思考などを通してつかんだ、自然や人の心の一瞬を鋭く定着している。この短詩型にかける俳人の日々の精進が思われる。

●大輪氏は、その著書を見てもわかるように、初めは、上田秋成研究者だった。私は、恩師・重友毅先生主宰の日本文学研究会で、何度かお会いしている。大輪氏の研究発表も拝聴している。その内容の斬新さに感激したのを、今も忘れない。

●日本文学研究会の常任委員、高橋弘道氏は、芭蕉・蕪村・素堂・其角・丈草・一茶等の研究者である。後半生、俳句に打ち込み、鎌倉で俳句結社を立ち上げた。句集も『俳游・高橋弘道句集』(海紅舎)、『古都悠悠・高橋弘道句集』(現代俳句10人集:5、北溟社、1996)を出版、「俳壇」16(本阿弥書店)等、俳句活動を展開された。

●文学研究と創作活動、私の知っている研究者で、創作の分野で活躍しておられる方々は少なくない。しかし、大輪氏の如く、大きく花開かせた方は少ない。


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  • 2019.11.14 Thursday
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