「奥様と雪隠 井関隆子」

  • 2019.05.21 Tuesday
  • 11:07
「奥様と雪隠 井関隆子」野口武彦氏(『週刊新潮』2004年7月29日)

●天保11年5月17日の条を取り上げている。江戸城に近い、九段坂下に、およそ500坪ほどの屋敷はあったが、それでも隣家とは接近しており、様々な悩みはあったようである。ここでは、トイレの臭いを取り上げ、特に、こちらが食事時や、来客の折は閉口する、と嘆く。このような、下ネタなどは、ほどほどに止めれば済むものを、彼女はそうはしない。古典の中の描写から、現在の江戸の糞尿の処理に至るまで、延々と記し続けるのである。ここに、隆子の好奇心一杯な性格と、書かずにいられない、作家的資質を見る事ができる。

●野口氏は、この条を軽妙な文章で紹介してくれた。そして、

「旦那様は可もなく不可もない人物だったようだが、奥様の方は古典文学の教養が深かった。読書量がすさまじい。才気溌剌とウンチクを傾け、クサイ話題を王朝物語の香りにくるむのが強みである。・・・どんな下世話な事柄でも上品になるから妙である。」

として、その文章力を高く評価しておられる。

●文学を評価する場合、まず第一に問題になるのが文章であろう。〔文学〕にとって、良い文章とはどのようなものか。美文が、絶対条件ではない。その文章に盛り込まれた、気品ある内容こそ大切だと、私は思う。

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  • 2019.09.16 Monday
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