長島弘明編 『〈奇〉と〈妙〉の江戸文学事典』

2019.05.22 Wednesday

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    『〈奇〉と〈妙〉の江戸文学事典』

    長島弘明 編
    A5判、536頁、定価、3200円+税
    2019年5月11日、文学通信発行

    目次

    はじめに
    使い方ガイド

    機,泙犬瓩砲佞兇韻襦 。院腺隠
    供仝る・観る・視る  12〜22
    掘”櫃ぁ かわいい?  23〜31
    検〜運佑? 悪人か? 32〜36
    后仝殿紊鮓諺曚垢襦 。械掘腺苅
    此^朸燭貌瓦譴襦 。苅押腺苅
    察[する・愛する  50〜60
    次,海箸僂鯔瓩  61〜65
    宗(語を織る  66〜73

    ●江戸文学を楽しむための用語集
    ●奇と妙の江戸文学年表

    あとがき
    執筆者一覧
    主要事項索引
    主要人名索引
    掲載図版索引
    ジャンル別項目一覧

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    はじめに

     江戸文学を読むたびに感じるのは、江戸文学の作品には喜怒哀楽のすべてが生の形で出ているということです。至ってきまじめにシリアスな作品から、笑いを通り越して涙が出てきそうなほど馬鹿馬鹿しい作品まで、何でもあります。そういう江戸文学の豊かさは、一般の方々にぱまだまだ十分に伝わっていません。
     何でもありの江戸文学こそが人を幸せにする、それが言い過ぎなら、江戸文学を読むと必ず心豊かになる。それを伝えたいためにこの本を編みました。
     江戸文学の本質は、〈奇〉と〈妙〉ということばで表すことができます。〈奇〉も〈妙〉も、それを合わせた〈奇妙〉も、不思議な物、珍しい物、普通ではない物、変な物を言うことばです。と同時に、〈奇〉も〈妙〉も〈奇妙〉も、けた外れに素晴らしい物、とんでもなく面白い物、極上の美味い物を指すことばでもあります。
    そういう〈奇〉と〈妙〉に溢れた作品を有名無名とりまぜて選び、読める事典として編集しました.各項目は、いわゆる辞書的な記述ではなく、内容がわかるように、また面白さが分かるように書いてありますので、やがてその作品を丸ごと全部読んでみたくなるはずです。
     この本を通じて、明るく、雄々しく、気高く、やさしく、優雅な、そして、時には卑屈で、脳天気で、意地悪で、怠け者で、しみったれた江戸人たちの息づかいを、どうぞ存分に肌で感じていただきたいと思います。
                            長島弘明

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    編者  長島弘明(ながしま・ひろあき)

    一九五四年、埼玉県生まれ。一九七六年、東京大学文学部国語国文学科卒。一九八〇年、東京大学大学院博士課程中退。実践女子大学専任講師、名古屋大学助教授、東京大学大学院教授を経て、現在、二松学舎大学特別招聘教授。専攻は日本近世文学。
    主な著書に、『建部綾足全集』(共編著、国書刊行会、一九八六〜一九九〇年)、
    『上田秋成全集』(共編著、中央公論社、一九九〇年〜)、『上田秋成』(新潮古典文学アルバム二〇、編著、新潮社、一九九一年)、『雨月物語の世界』(ちくま学芸文庫、筑摩書房、一九九八年。初版『雨月物語 幻想の宇宙』(上・下)NHK出版、一九九四・一九九五年)、『古典入門 古文解釈の方法と実際』(共編著、筑摩書房、一九九八年)、『秋成研究』(東京大学出版会、二〇〇〇年)、『本居宣長の世界 和歌・注釈・思想』(編著、森話社、二〇〇五年)、『国語国文学研究の成立』(編著、放送大学教育振興会、二〇一一年)、『名歌名句大事典 歳時・人・自然』(共編著、明治書院、二〇一二年)、『上田秋成の文学』(放送大学教育振興会、二〇一六年)、『雨月物語』(岩波文庫、校注、岩波書店、二〇一八年)など。

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    執筆者(五十音順)

    一戸渉  位田絵美  大屋多詠子  柏崎順子  加藤敦子  神谷勝広  金慧珍  金美眞  黄智暉  合山林太郎  高永爛  小林ふみ子  佐藤かつら  佐藤知乃  佐藤至子  杉下元明  杉田昌彦  杉本和寛  全怡■  高野奈未  高松亮太  崔泰和  千野浩一  冨田康之  丹羽謙治  早川由美  韓京子  日置貴之  片龍雨  深沢了子  洪晟準  牧藍子  水谷隆之  光延真哉  宮木彗太  矢内賢二  山之内英明  梁誠允  吉丸雄哉
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    ■けた外れに素晴らしく とんでもなく面白い !
     めくるめく魅惑の江戸をもっと知りたい !
     江戸文学という新世界への入門書
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    ●本書のオビには、このようなキャッチフレーズが出ている。江戸文学を、〈奇妙〉という視点からとらえた、読み物風の〈事典〉ということか。中身をパラパラと拝読したが、内容は、いたって真面目に書かれている。易しく読みやすい。

    ●江戸時代の文芸は、近世初期の大啓蒙期の著作から始まって、元禄文芸の大開花、後期から末期へかけての爛熟と考証と退廃、そうして、世界の波に漕ぎ出す近代文芸へと繫がってゆく。大変な300年間であった。〈雅〉と〈俗〉でとらえたり、様々な試みがなされている。

    ●編者の長島弘明氏は、「まえがき」で、

    「江戸文学の本質は、〈奇〉と〈妙〉ということばで表すことができます。〈奇〉も〈妙〉も、それを合わせた〈奇妙〉も、不思議な物、珍しい物、普通ではない物、変な物を言うことばです。・・・」

    と言っておられる。長年、江戸文学研究をされてきた、長島氏の到達点ということで、本書は編纂されたようである。

    ●古代文学、平安朝文学、中世文学、そうして、近世文学、日本の古典文学を眺めると、その時代、その時代の文学者が、様々な活動をして、文芸遺産を遺してくれた。徳川幕府の政治体制の下で開花した文芸、その本質は〈奇〉〈妙〉である、と教えられた。

    ●33 大悪人変じて大和尚となる  『春雨物語』(読本)

     の項は、長島弘明氏の執筆で、その写真は、「文化五年春三月 瑞龍山下の老隠戯書 于時歳七十五」の奥書をもつ写本、昭和女子大学図書館所蔵、桜山文庫本を掲載している。私としては、非常に嬉しい。今は亡き、木越治氏も喜んでおられると思う。

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    木越治先生は、二〇〇八年(平成二〇年)二月二〇日、森話社発行の『秋成文学の生成』所収の「『春雨物語』新稿、三 上級編――近世文学を専攻する研究者のために」で、さらに深化した、『春雨物語』テキスト論を述べておられる。
     現在、市販されている校注書の中から、
     A『新編日本古典文学全集』小学館、一九九五年
     B『新潮日本古典集成』新潮社、一九八〇年
     C『日本古典文学大系』岩波書店、一九五九年
     D『全対訳日本古典新書』創英社、一九八一年
    の四点を取り上げ、底本の使用状態を一覧表にして示しておられる。
    この内、A・Cは作品よって、天理巻子本と文化五年本を取り合わせて使用している。B・Dは、富岡本と文化五年本を使用しているが、各作品の中では取り合わせはしていない。文学作品の場合、どのような底本の使用の仕方が妥当であるか、現在は明らかであると、私は考えている。

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    ●これは、昨年、木越治先生の追悼文で書いたものである。